五月のよる

よる子と彩月の気まぐれで出来たことばと写真の出逢いたち。世界のほんとうのことを探すふたりの旅路。

76. 文句いっぱいな彼女の物語の続き

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目覚めての不満文句はお日様の優しさの中溶けて明日へと

(彩月)

 

連作(三首)

生きなくていい人なんて誰もいない文句不満も生(せい)あればこそ
ありふれた生でもそこに物語不満文句にささやかな愛
光見よ袖擦れ合えば人生の一部になりぬ祈りよ届け

(彩月)

 

唐突に訪れた死の淵から
やさしく突き返された彼女が再び瞳を開いたとき、
明るすぎる青い澄んだ空に精一杯顔をしかめて文句を言ってくれますように。

 

傍らにいる彼らが怒ったり泣いたり笑ったり。静かにしてよ、といつも通り文句を言ってくれますように。

 

文句ばっかり
不満ばっかり
そんな彼女なのだけれど、
唐突な終わりはなく、これから先も彼女の命の物語が紡がれていきますように。

物語の後半が、彼女らしく文句で綴られていても、
必ず光の中にいられますように。

(よる子)

 
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74.光を探す人

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(彩月)

 

連作(首)

 

(彩月)

生身の身体があるからこそ自由。

思考し、時何かを作り上げ、あなたの手を握る。
されど、身体がある故に不自由。


差し当たっては
のしかかる重力
日々潰れていく骨

頭に巡らぬ血液

酸欠の魚のようにぱくぱくともがく私。

 

いつまで続くのか。
しかし、続く限り命はあるということ。

 

失ったものがあるから
当たり前のことに焦がれ、尊く偲ぶこと。

少しだけ取り戻した経験があるから、
希望を持てるということ。

それでも駄目ならなら駄目で、それが私に与えれたしあわせで
数えきれないほどの宝物がたくさん隠れていること。

 

こんな夜が続くと忘れてしまいそうになる。
自覚するのは、重力、臓物、骨、痛み、あるはずの空気。

 

どんなものでも与えられたものは十二分に使いたい。
だからどうか、
今日も誰かを羨むことがないように、強い心が持てますように。
不満を嘆かず、光を探す人になれますように。
強く、強く、祈る。

(よる子)

 
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73.散花讃歌

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(彩月)

 

連作(首)

 

(彩月)

散花をうらめしく見るのはやめた。

讃歌にて見送る。

さようなら、また来年。

瞬間の美しさを、1日を見せてくれた花たちに

これから巡る季節に讃歌を贈ろう。

来年こそ、また会おう。

(よる子)

 
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72.沈黙

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(彩月)

 

連作(首)

 

(彩月)

何処とも解らぬ深みにて
貴方は再び沈黙す。
それとも私が耳を塞いだか。
彼は誰時。

 

正しきことを見る目を
聞くまじきことを聞かぬ強さを与え給え。
惑わされず踊らされず
痛みを鋼の盾とし
我が沈黙を矛とせよ。

(よる子)

 
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71.彼女たちの冒険譚

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(彩月)

 

連作(首)

 

(彩月)

小さな二人の世界で初めての

いってらっしゃい、いってきます。

行かせたくないよ、行きたくないよ。

ただいま、お待たせ。

おかえり、抱っこして。

おかえり、抱きしめさせて。

ただいま、離れたくない。

 

こんな毎日がずっと続く。

在り来たりな 何処にでもある

それでいてなんて愛おしい光景。

その世界には愛しか存在しない。

 

それは彼女たちの冒険譚。

初めて拾うものは己が涙か、互いの涙か。

いつかはそれこそも輝く宝石となる。

 

だから、桜よ。

まだ、暖かな色で彼女たちを柔らかく包んでよ。

儚く散っていかないで。

泣き虫の彼女たちの 大きい方は

きっと泣いてばかりだから。

泣き虫の彼女たちの 小さい方は

わからないことだらけで 大きな彼女を探すから。

二人のために咲いていて。

いってらっしゃいの薄明かりの中、

傍らにいてほしい。

(よる子)

 
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70.おはよう

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(彩月)

 

連作(首)

 

(彩月)

あなたが私に最初にかけた一言は
特別な言葉なんかではなかった。
ただ、「おはよう」と。
ただし、愛を込めて。
朝靄の中、山脈の岩は
あなたのおはように呼応するかのように光り輝く。

(よる子)

 
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